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コラム|Songs of Protest ―音楽で差別を知る― The Message

Grandmaster Flash "The Message" - Japan for Black Lives

アメリカの黒人文化と人種差別に対する抗議は切っても切れません。発言力を持たされていない黒人たちが、思いを芸術に昇華し、それがまた彼らを勇気づけてきました。このコラムでは特にメッセージ性が強いそんな曲を歌詞の和訳とともに紹介します。


Grandmaster Flash & The Furious Five – The Message

歌詞和訳

ジャングルみたいだ 時々
どうして死なずにいられるのか不思議になる

そこらじゅう割れたガラスだらけ
階段でションベンしてる奴ら 構やしないんだろうな
俺は臭いに耐えられない 騒音も無理だ
でも引っ越す金もないから 選択の余地はない
リビングにはネズミ 奥の部屋にはゴキブリ
路地には野球のバットを持ったヤク中
逃げようとしたけど 遠くには行けなかった
車がけん引されて取り上げられたんだ

押さないでくれよ 崖はすぐ後ろ
正気を失わないように踏ん張ってるんだ
ジャングルみたいだ 時々
どうして死なずにいられるのか不思議になる

家の前の階段に立ったり 窓から乗り出したり
そよ風が吹く中 けたたましく通ってく車を眺める
袋抱えて路上生活する 狂った女
ゴミ箱から食べ物漁る 元々はホモたちとつるんでた
タンゴも踊るし ファンダンゴのステップも踏むってさ
ジルコン(12月の誕生石)の姫は気が触れたらしい
ピープショー(のぞき見ポルノ)での変態観察は
地元の友達への土産話用にね
街に出た彼女は それはまぁお高く止まってた
一人じゃ生活できなくて ポン引きの世話になったとさ

ジャングルみたいだ 時々
どうして死なずにいられるのか不思議になる

兄貴が金に困って お袋のテレビを盗った
見すぎだ、健康に悪いっつって
昼間は昼ドラ 夜もドラマ
試合観戦もできないし シュガー・レイのマッチも見れない
取り立て屋からの電話が鳴る
俺の留守中に妻を怖がらせるんだ
大した教育も受けてない インフレは2桁
通勤に電車も使えない 駅でストライキしてんだ
背中にネオンのキングコングが仁王立ち(※)
立ち止まって振り返れない 仙腸骨折れてな
中程度の片頭痛 癌化した膜
時々 狂い始めてるのかって思う
マジでハイジャックとかやっちゃうかも!

押さないでくれよ 崖はすぐ後ろ
正気を失わないように踏ん張ってるんだ
ジャングルみたいだ 時々
どうして死なずにいられるのか不思議になる

息子が「パパ、学校行きたくない」と言った
先生が最低だって、馬鹿にしてくると
子供は皆ハッパ吸ってるし
働いた方がお金かからないと
道路掃除の仕事とか
ビートに合わせて ステップを踏むダンサー
シャツにネクタイ締めてオフィス街でイカレた商売
だって金が全てだろ 面白くなんかない
地上の楽園ではイカサマくらいできなきゃな
女の子が線路に押されて
連れて行かれた病院で 腕をまた縫い付けてもらった
男が心臓を突き刺されて
心臓移植を受けて 人生を新しく始めた
公園の中は歩けない 日が暮れるとヤバいんだ
手は拳銃にかけたまま いつも逃げてる
無法者の気分だ 最後のガラスの顎も砕けた
声が聞こえる「まだやられてえか?」
シーソーみたいな生活

押さないでくれよ 崖はすぐ後ろ
正気を失わないように踏ん張ってるんだ
ジャングルみたいだ 時々
どうして死なずにいられるのか不思議になる

子供は生まれたときに考え方は持っていない
人類の生き方に対して盲目だ
神は微笑んでいるが 顔をしかめてもいる
お前がどんな苦労をするかは神のみぞ知るから
ゲットーで育ち 二流市民として生きる
お前の目は深い嫌悪という歌を歌う
お前が遊ぶ場所も 泊まる場所も
一つのでかい路地裏に見えるだろう
尊敬の対象は数当て賭博(違法賭博の一種)の胴元
ゴロツキ、ポン引き、売人、ガッポリ稼いでる奴ら
デカい車に乗って 羽振りよく金を使う
大きくなったら奴らみたいになりたいんだろ
密輸入者、運び屋、強盗にギャンブラー
スリする行商、果ては物乞い
お前は「俺は大丈夫だよ、馬鹿じゃないんだし」って言うが
結局高校も退学
仕事もないし 価値もない
「プリティボーイ」フロイドみたいに歩き回って
ピストル強盗に変わっちまった なんてことしたんだ
8年の刑期でブチ込まれ
お前の男人生は取り上げられ 他の囚人の便所になる
そこから2年は隠れホモとして過ごし
地獄のように こき使われ 乱暴され
ある日牢屋で首吊って死んでるのを発見される
お前の命が絶たれてることは明らか
体は冷たく ゆらゆら揺れてた
今お前の目は悲しい悲しい歌を歌う
生き急いだお前の人生の歌

押さないでくれよ 崖はすぐ後ろ
正気を失わないように踏ん張ってるんだ
ジャングルみたいだ 時々
どうして死なずにいられるのか不思議になる

よぉメル、あそこの女見えるか?
ああ見える(オッォー!)
あの声カウボーイじゃね?よーぅ元気かよ?
クリオールとラヒームは?
多分上の階で涼んでんじゃね
今夜何か予定ある?
フィーバー行こうぜ
いや、ジューンバグ行ってみようよ
てかベティーって女知ってる?
知ってるけど
母ちゃんがひったくられたって
またかよ ふざけんな
怪我もひどいって
いつの話だよ?
なんだ?
動くな!何も動かすな わかってるだろ!
なんだよ?
いいから手を挙げろ!
俺らグランドマスターフラッシュとフュリアス・ファイブのメンバーだよ
グランドマスターフラッシュ?なんだギャングか?
ちげーよ!
黙れ!つべこべ言うな、いいから黙れ
すいません、おまわりさん、何か問題でもあったんすか?
問題って・・・問題はおめーだよ!
押すことねーじゃねーか
いいから車に乗れ 車に乗るんだ
乗れっつってんだろ!
なんで俺らパクられてんだよ?

※ 麻薬中毒、借金など厄介な問題を抱えていることをMonkey on my back(背中に猿を背負ってる)と言いますが、ここでは巨大な猿、しかもけばけばしいネオンのキングコングが背中に仁王立ちしてる、つまり誰が見てもすぐにわかるような巨大な面倒がつきまとっているという言葉遊びです。

解説・考察

1982年にリリースされて以降、何百曲にもサンプリングされ、歌詞の引用も幾度となくされてきたこの曲は、当時のヒップホップの「楽しい」か「威張る」かの型にはまらない革新的なフォーマットでした。ラップは元々、ファンクやディスコなどの曲の歌詞が入っていない部分だけをつなぎ、その上に乗せるリズミカルなMC(Master of Ceremony、つまり司会)のベシャリでした。いかにうまい言い回しをするか、面白いことを言えるかがポイントで、最初のヒップホップレコードと言われるシュガーヒル・ギャング(Sugarhill Gang)の「ラッパーズ・ディライト(Rapper’s Delight)」が1979年に発売されてから一大旋風が巻き起こりますが、「ラップ風」の曲も沢山出てきます。一時的な流行りで終わってしまうかもしれなかったこのスタイルに芸術の一形態としての奥行きを持たせ、表現の新たな門を開けたのが、グランドマスター・フラッシュ「ザ・メッセージ」でした。

今や世界中に広まり、アメリカではヒットチャートの大半を占めるヒップホップの懐の広さはこの曲で確立されたといっても過言ではなく、ローリング・ストーンズ誌でもヒップホップ史上最も重要な曲と位置付けられています。「治安が悪い」とされていた「アーバン(都市部)」エリアの悲惨な実情をまざまざと描き、何の理由も説明もなく警察に連行されるスキットで締めくくられる「ザ・メッセージ」は、今にも通じるヒップホップ初の抗議の歌でした。

ヒップホップの歴史や進化について興味がある方は、Netflixシリーズ「ヒップホップ・エボリューション」もご覧ください。ヒップホップ・パーティーの創始者や、ヒップホップを形作った立役者たちが登場し自らの言葉で当時の状況や思いを語る貴重なドキュメンタリーです


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