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コラム|Songs of Protest ―音楽で差別を知る― A Change Is Gonna Come

サム・クック / A Change Is Gonna Come - Japan for Black Lives

アメリカの黒人文化と人種差別に対する抗議は切っても切れません。発言力を持たされていない黒人たちが、思いを芸術に昇華し、それがまた彼らを勇気づけてきました。このコラムでは特にメッセージ性が強いそんな曲を歌詞の和訳とともに紹介します。


Sam Cooke – A Change Is Gonna Come

歌詞和訳

俺は川のそばで生まれた
小さなテントの中で
そして流れる川と同じように
ずっと走ってきた
あぁ 長かった
長い時間がかかったが 確信している
変革が訪れると
あぁ 訪れるとも

生きるのは大変すぎる
でも死ぬのは怖いんだ
上に何があるかわからないから
空の向こうに
あぁ 長かった
長い時間がかかったが 確信している
変革が訪れると
あぁ 訪れるとも

俺が映画館に行こうと
繁華街に行けば
誰それも「ほっつくな」と言う
あぁ 長かった
長い時間がかかったが 確信している
変革が訪れると
あぁ 訪れるとも

ブラザーのところに行き
「お願いだブラザー、助けてくれ」と言っても
彼は結局 俺を殴り
俺は崩れて膝をついた

もう長くは続けられないと思ったこともあった
でも今では 歩いて行ける気がする
あぁ 長かった
長い時間がかかったが 確信している
変革が訪れると
あぁ 訪れるとも

サム・クックについて

ジム・クロウ法※詳しくはこちら)で人種分離政策が敷かれていた南部・ミシシッピ州を逃れ、イリノイ州シカゴに移住したクック一家の家長、チャールズ・クックは牧師でした。

息子のサムは、立身出世するシカゴの黒人たちに囲まれて成長し、自然と教会でゴスペルを歌うようになります。やがてメジャーでもヒットを飛ばすと、のちにモハメド・アリと改名する強力ヘビー級ボクサーのカシアス・クレイやマルコムXと交友を深めました。黒人が下級市民と見られていた当時、黒人の人権を推進するキング牧師やマルコムXは危険人物とみなされ、FBIからも目をつけられていましたが、白人にも黒人にも影響力があるサム・クックも例に漏れず国家の脅威とされていました

サム・クックはシカゴで培った起業家精神をもって自らのレコード・レーベルを立ち上げ、自分や他のアーティストの取り分や地位の向上に奮闘していたからです。黒人のミュージシャンや歌手はもちろんたくさんいましたが、利益はたいてい、白人の雇い主に全部かすめ取られていたのです。

かくしてサムはアーティスト、ソングライターとしてのみならず、ビジネスマンとしても成功していきました。そんなさなか、33歳の若さでサムは銃殺され、およそ世間が納得のいくような説明もないまま、殺人は「正当防衛」と片付けられます。A Change Is Gonna Comeは彼の疑惑多き死から2週間後、クリスマス直前にシングルのB面として発売されました(収録アルバムリリースは同年3月)。

解説・考察

この曲は、ボブ・ディランが公民権運動を受けて書いた「風に吹かれて(Blowing in the Wind)」に強く影響を受けてサム・クックが書いた名作です。白人があんなに力強いプロテスト・ソングを書けるのであれば自分も書かなければと、「風に吹かれて」が第三者目線で問いかけをする詞であるのに対し、サムは当事者目線で、今の状況が変わってほしい、変わらなければならないという悲痛な思いとともに、きっと変わるという漠然とした希望を描いています。シングル盤では、町が明確に人種で区切られていたことを示す「繁華街」の部分がカットされていたことからも、強いメッセージ性があったことがうかがえます。

45年後、シカゴ出身のオバマ大統領の就任式でこの曲が歌われた時(ベティ・ラヴェットとジョン・ボン・ジョヴィ)、涙を浮かべた人がどれだけいたかわかりません。選挙活動で「Change」を訴えたアメリカ初の黒人大統領の就任を、キング牧師やマルコムXやローザ・パークス、公民権運動に力を注いだアーティストとして著名なジェームズ・ブラウンレイ・チャールズ、その他数えきれないほどの故人がその時生きて目撃していたら、「あぁ、ここまで来れた」と胸をいっぱいにしたに違いません。そして、黒人の大統領が、人種差別の終わりの象徴となると考えていた人も多いはずです。

“Change” の後に来た “Again”

しかしその8年後、多くの識者がその反動ととらえるトランプ大統領が就任し、人種間の分断が深刻化(見方を変えれば単なる表面化)しました。

彼がまだニューヨークで不動産を営んでいた1989年、セントラルパークで白人女性がジョギング中にレイプされ半殺しにされた事件がありました。警察が未成年の黒人やヒスパニックの少年たちを長時間に渡り弁護士なしで尋問して引き出した自供に基づき、その後セントラル・パーク・ファイブとして知られる5人の黒人とヒスパニックの少年たちは、それぞれ5年から13年もの間投獄されることになります。(※参考:Netflixシリーズ「僕らを見る目」

ドナルド・トランプはニューヨークの新聞社数社の全面広告を買い、この事件に触れたうえで「死刑制度を復活させろ、警察を復活させろ」と訴えます。その後、彼らの身の潔白が証明され、大事な青春時代を冤罪により刑務所で過ごした5人は釈放されます。ニューヨーク市は2014年に非を認め損害賠償を支払いましたが、大統領となったトランプはこれについて聞かれても「賛否両論ある」とコメントし、当時そのような新聞広告を打ったことに対する謝罪などは何もありませんでした。

トランプ大統領がキャンペーンで掲げたスローガンは ”Make America Great Again(アメリカを再び偉大に)”。トランプや彼の支持者が懐かしむ “Great” さは、黒人やヒスパニック、ネイティブアメリカン始め、多くのPOC(=people of color)の犠牲の上に成り立っていたことを忘れてはなりません。 Change―良きにも悪きにも「変わる」ことはできます。真の変革には、長い時間がかかります。一歩進んだと思えば、三歩下がることもあります。自分がどのように変革するのか、世の中をどう変えていきたいか。考えるきっかけにしてみてください。


私たち Japan for Black Livesは、黒人差別についての理解を深めてもらうために活動しています。InstagramTwitterFacebook、そしてこのサイトを一緒に運営していただけるボランティアを随時募集しています。気になる方は各種ソーシャルメディアからダイレクトメッセージをお送り下さい。

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