〉人種差別的な職務の改善を求める署名に賛同ください

ブラックヘアの背景とスタイリング:当事者が監修するヘアメイクアーティス向けのセミナーレポート

ブラックヘア当事者と、ニューヨークで活躍する黒人向けヘアメイクアップアーティストが主催する初のブラックヘアセミナーが開催され、参加したヘアメイクアーティストや美容師から大きな反響を呼びました。


12月17日、ニューヨークで活躍するヘアメイクアーティストのNarumiさんと、日本生まれ育ちのアフリカ系アメリカ人のティファニー・レイチェルさんによる、初のブラックヘアセミナーが渋谷で開催されました。

Japan for Black Livesとして日頃からブラックヘアに関連する様々なトピックを発信している私たちにとっても非常に興味のあるセミナーでしたので、今回取材に伺ってきましたが、参加されたヘアメイクアーティストや美容師など関連業種の方々から、非常に大きな反響を呼んでいました。

主催者について

Narumi

福岡県出身。現在はニューヨーク・ハーレムを拠点に黒人向けのヘアメイクアーティストとして活躍中。
Instagram : @narumi_hmua

ティファニー

茨城県生まれ育ち。アメリカに6年間滞在した経験を活かし、ブラックカルチャーに関するコンサルティングを行う。
Instagram : @tiffrichx

4年来の友人であるおふたりが、今回それぞれの専門知識と経験を融合させ、本セミナーを共同開催しました。

ブラックヘアに対する理解がまだ低い日本

多様な日本では、黒人ルーツを持つ日本人や外国人の方々が多く暮らしていますが、私のようないわゆる日系日本人の髪質と違って、様々なタイプのカーリーヘアが特徴のブラックヘアは、その特徴に応じた製品を使用したケアや、アレンジが必要です。ですが、日本ではブラックヘアの特徴をしっかりと理解したヘアサロンやヘアケア製品が十分であるとは言えません。また、当事者やその家族でさえも、どのように髪の毛を扱うべきかわからず、手探りでやっているという声も聞きます。

また、ブラックヘアのメンテナンスは、直毛の髪質に比べるとステップが多く、大変だと言えます。私の周りの友人たちも、カールをきれいに保つためのケアや、乾燥を防ぐケア、睡眠時の保護など、何通りものケアをしています。そしてヘアケアに加え、日常時のヘアスタイルとして、ブレイズ(編み込み)やロックスで美しくまとめていますが、根元から髪の毛が伸びてきた際にそれをきれいにまとめ、なじませる技術も素晴らしいものです。ですが、この一連のメンテナンスは、見よう見まねですぐにできるものではありません。

理解不足からくる偏見や差別

そんなきめ細やかなメンテナンスで美しく保たれているブラックヘアは、黒人の文化・そしてアイデンティティでもあるというのに、被当事者の理解不足により、偏見を持たれ差別されたり、不潔だと思われたりすることもしばしば。

Japan for Black Livesが2020年から問題提起して、2023年からは裁判にも参加している、日本の警察による「レイシャル・プロファイリング(人種差別的な職務質問)」の問題も、警察のブラックヘアに対する理解不足からくる偏見がきっかけになることが少なくありません。

関連記事|レイシャル・プロファイリング

今回のセミナーは、ヘアメイクアップアーティストなど、いわゆる「髪の専門家」向けですが、まずは彼らから、ブラックヘアに対する理解を深めてもらうというアプローチはとても正しいと思いました。ブラックヘアの当事者であるティファニーさんと、ニューヨークで日々、黒人向けヘアメイクを担当するNarumiさんだからこそ発信できる内容でしたので、参加者の皆様はもちろん、私にとってもとても有意義な時間となりました。

ブラックヘアの歴史と実践的な知識を共有

セミナーでは、ティファニーさんが、黒人のナチュラルヘアの歴史や基礎知識を紹介。アメリカでの生活経験をもとに、日本とアメリカにおけるブラックヘアに対する意識の違いも解説しました。

アメリカで黒人のナチュラルヘアが広く受け入れられるようになったのはここ15年ほどのことで、比較的新しいトレンドです

Narumiさんは、ヘアメイクアーティストとしての視点から、実際に使用されているヘアケア製品を取り上げ、その使い方を実演。日本では入手が難しい海外製品をセミナー会場に取り寄せ、製品の特徴や具体的な活用法について詳しく説明しました。

日本に新たな視点を展開

セミナーでは、Narumiさんの専門知識と、ティファニーさんのブラックヘア当事者としての経験が融合した内容が展開され、参加者にとって、ブラックヘアについての新たな視点を得られる貴重な場となったようです。二人は、異なる環境で培ったそれぞれの経験を掛け合わせることで、日本におけるブラックヘア理解の促進を目指しています。

ティファニーさんは、「ナチュラルヘアに関する情報は進化を続けています。これからもセミナーを通じて、日本でブラックヘアについて学べる機会を増やしていきたい」と意気込みを語りました。

今回のセミナーは、ブラックヘアに関する知識の普及や、新しい視点の発信という意味で、日本における画期的な一歩となったのではないでしょうか。

参加者の声から見るセミナーの反響

今回のブラックヘアセミナーには、ヘアメイクアーティストや美容師、そしてヘアモデルとして活動する方々が参加。各々が感じた学びや気づきを、以下にまとめました。

20代・歌手
(女性/イベントヘアモデル)
20代・歌手 (女性/イベントヘアモデル)

自分はハーフとして日本で育ちましたが、自分の髪をちゃんと理解してくれるサロンを何十件も探しても見つかりませんでした。一時はストレートに憧れて縮毛矯正をしていた時代もありますが、それでも髪に関してはたくさん悩みました。今回、このセミナーに招待していただき、直接その様子を見られて本当に嬉しかったです。ぜひもっと開催してほしいです!

20代・ヘアメイクアーティスト
(女性)
20代・ヘアメイクアーティスト (女性)

ハーフや外国人の友達がいて、髪型はスタイリング剤で簡単にできると思っていましたが、短髪の男性でも3時間もかけてスタイリングするとは知らず驚きました。今年はブレイズやコーンロウなども試しましたが、そのスタイルにするまでケアのノウハウとか気にしたことがなくて、ドゥーラグを使う必要があるなんて初めて知りました。現地のプロダクトや話を直接聞けて、すごく勉強になりました。

30代・ヘアメイクアーティスト
(女性)
30代・ヘアメイクアーティスト (女性)

今回のテーマはブラックヘアでしたが、日本人の中にも生まれつきカーリーの髪や異なる髪質を持つ方がいますので、そういった方へのアプローチにも活かせる内容で、とても勉強になりました。

20代・ヘアメイクアーティスト
(女性)
20代・ヘアメイクアーティスト (女性)

普段日本では見ないような、細いコテ(ヘアアイロン)や珍しい道具や製品が紹介されていて、こういうセミナーに参加しないと見ることができないものばかりで、とても面白かったです。

20代・ヘアメイクアーティスト
(女性)
20代・ヘアメイクアーティスト (女性)

最近、一番興味関心のあるトピックだったので、セミナー情報を見た瞬間に行きたいと思いました。初めて見るプロダクトも多く、また日本ではなかなか出会えない方々と直接お話できて、たくさんの刺激をいただきました。これを機に、海外の案件にも挑戦したいと思いました。

40代・美容師
(男性)
40代・美容師 (男性)

知らないことばかりで驚きました。早速取り入れてみたいです!

参加者の声に共通する「発見」と「希望」

多くの参加者が、普段触れる機会のない情報や製品、そしてブラックヘアへの理解を深めることで、新たな発見と挑戦意欲を得た様子でした。特に、ケアやスタイリングに関する知識が不足している現状を実感しつつ、それを補う場としてこのセミナーが非常に有意義であったと感じた方が多かったようです。

今後もこうしたイベントが継続的に開催されることで、さらなる学びや新しい視点が広がっていくことが期待されます。

参考リンク

記事|茨城生まれのアフリカ系アメリカ人、ティファニー・レイチェルさんのストーリー

記事|米国で黒人差別を経験し再来日したYouTuberが、今こそ「願ってやまないこと」

記事|黒人ユース9人が語る、BlackLivesMatterと日本の人種差別


Japan for Black Livesについて

わたしたちは、日本国内にある黒人差別の現状を、日本にいる多くの人に認識してもらうべく発信しています。差別問題はまず現状を知ることから始まります。そして学び、当事者の声を聞いて共感し、共に声を上げ、改善するアクションを起こし、ともに世の中を変えていきましょう。メンバーは こちら。お問い合わせや講演などのご依頼はメールでお願いします。

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